青井ノボルです。
先日、アクティブファンドに関する興味深い記事を見掛けました。
「米運用会社においてインデックス型への資金流入が減る一方でアクティブ型に回帰している」という日経新聞の記事を取り上げて、アクティブファンドが運用の王道だと主張されています。
アクティブ型は、運用者が情報収集をして指数を上回るパフォーマンスを目指す運用方法です。
一方でインデックス型は、指数と連動したパフォーマンスを目指す運用方法です。
どちらが優れているのかという議論はあっても、どちらが王道かというハナシは初見です。
個人的に気になったので、アクティブファンドこそが運用の王道なのか、考えてみました。
目次
王道という言葉の意味をどう捉えるかで結論が異なる
まず、ここでいう「王道」という言葉の意味を確認しておきます。
一般的に、王道という言葉は「正攻法」「ベタな選択」というニュアンスで使われています。
ただ、ちゃんと辞書で調べると「楽な道」「近道」というのが本来の意味であるようです。
冒頭で紹介した記事は「正攻法」というニュアンスで「王道」と言っているのかもしません。
「正攻法」というのは、奇策を用いることなく正面から堂々と攻めるやり方のこと。
アクティブは割安か判断して売買するハズであり、数多くの投資家が判断→売買を繰り返すことで、投資家の総意として市場価格が形成されます。
こうした意味においては、アクティブこそが定石通りの運用法と言えそうです。
一方で、「王道」の本来的な「楽な道」「近道」という意味で考えると、どうでしょうか。
インデックス型の運用は簡単だと思いがちですが、運用現場ではアクティブとは違う苦労があるようです。
とはいえ、情報収集から始まるアクティブよりも作業量としては少ないのかなと想像します。
またワタシのような投資素人の個人投資家にとっては、インデックス型の運用に軍配が上がります。
これについては過去にも何度か書きましたが、インデックス投資は手間がほとんど掛かりません。
事前準備さえしっかりやっておけば、運用中の手間は驚くほどに掛からないのがメリットです。
アクティブ投資であれば、指数を上回るファンドを探し続けないとパフォーマンスが落ち込みます。
そもそも論として、投資素人が指数を上回り続けるファンドを選択することは難易度が高いです。
本来の意味で考えた場合は、インデックスファンドこそ運用の王道であると言えそうです。
参照記事のロジックが不明確で理解できない
さて、冒頭の参照記事ではアクティブ型が運用の王道である理由を、このように書いています。
インデックスファンドの方が信託報酬が安い。安いから善い。アクティブファンドの信託報酬は高い。高い割にはパフォーマンスが良くないという側面がクロースアップされます。でも、これはファンドを選択する一部の側面に過ぎません。
(中略)
一方、善いアクティブファンドは、βは1.0以下(市場の感度、リスクが相対的に低い)で、かつ、超過リターンのαがあります。これは、もちろん、信託報酬など運用費を差し引いた年率リターンから計算しますし、市場も配当込みの数値を使います。
繰り返しますが、アクティブファンドの良し悪しは、信託報酬というコストだけではなく、そのコストを支払って上で、どれほどのα(超過リターン)があるか、β(市場リターン)をどれほど抑えることができたのかによって決まります。
だから、アクティブファンドが運用の王道だと言えるのです。
(引用元:COEMO アクティブ型は運用の王道/渋澤健より一部抜粋)
最後の一行を除いて、書いていることは確かにそうだなと頷ける内容ばかりでした。
アクティブファンドの良し悪しはコストだけでなく、超過リターンαがあるか、市場感度βが低いか、これが大事。
仮に信託報酬が高くても、優秀な運用者がコスト分以上に指数を大幅に上回る運用をすればOKですよね。
なおかつ、市場よりもリスク(リターンのブレ)が小さければ、それに越したことはありません。
ところで、このことが「アクティブファンドが運用の王道だと言える」という結論にどう繋がるのか、投資素人のワタシには理解できませんでした。
信託報酬の低さはファンド選択の一部の側面でしかない、という主張はなんとなく理解できます。
良いアクティブファンドの条件は超過リターンが大きく市場感度が小さいこと、これも理解できます。
ただ、上記2点を満たすことで「アクティブファンドが運用の王道だと言える」のでしょうか。
2つの前提と結論との間に、何か別の要素が無いと成立しないロジックのように感じます。
筆者は運用のプロなので、プロの間では常識的なハナシが隠れていて、あえて書かなかったのかもしれません。
(この記事で省かれている要素がお分かりの方がいれば、ぜひ教えてください)
インデックスファンドは運用の邪道!?
ここから先は、王道という言葉の意味が「正攻法」「定石通りの方法」という前提とします。
前述のとおり、上記の意味においてはアクティブファンドが運用の王道であるとワタシは考えています。
投資とは資本に投ずる行為であり、企業は得られた資本を事業にまわし利益を上げ、投資家に還元する、というのが基本的な考え方です。
投資家はボランティアではないので、将来利益を上げることができそうな企業に投資するのが正攻法だと言って良いでしょう。
つまり、どの企業がより将来性があるのか情報収集をしたうえで判断し、投資を実行するという運用こそが正攻法だと思います。
これはアクティブファンドが現場で実践している運用そのものですから、アクティブが運用の王道と言って差し支えないでしょう。
一方でインデックスファンドは、指数に連動したパフォーマンスを目指す運用を行っています。
将来性が高い企業を選ぶ必要は無く、市場平均である指数と同じ値動きを目指すことが重要です。
市場平均が投資家の総意によって形成されるとすれば、市場平均に連動した運用をするのは、他の投資家による判断に身を任せるということ。
このように考えると、インデックスファンドは運用の王道とは言い切れないように感じます。
うがった見方をすれば、市場平均にタダ乗りするインデックスファンドは運用の邪道という結論になるかもしれません。
個人投資家は運用の王道であるアクティブを選択すべきなのか
色々考えてみた結果、アクティブファンドは運用の王道であるという結論に達しました。
ところで、ワタシのような個人投資家にとって、運用の王道であるアクティブファンドを選択するのが王道なのでしょうか。
ワタシは、「プロによるファンド運用の王道」と「個人投資家によるファンド選択の王道」は異なると考えます。
情報取集をして合理的な投資判断をして売買を実行する、という運用の王道を貫くアクティブファンドですが、必ずしも運用パフォーマンスが優れているとは限りません。
ここでいうパフォーマンスというのは、参照記事にも書いてあったコスト考慮後のα(超過リターン)とβ(市場感度)です。
コスト考慮後のα(超過リターン)については、参考になる資料があります。
それは、つみたてNISAフェスティバル2018の公開資料です。
(引用元:つみフェス2018公開資料より一部抜粋)
左側のグラフでは国内株式のアクティブファンド運用成績が指数を上回った割合を示しています。
つまり、超過リターンαがプラスであったアクティブファンドの割合を示しているグラフです。
1年保有が青棒グラフ、5年保有が赤棒グラフです。
黒横線の50%を超えると、アクティブファンドの半数以上が指数に勝ったことになります。
このグラフを見る限りでは、1年保有であればそれなりに指数に勝てることが分かります。
2017年は8割が指数を超えていますが、背景として、2017年の日本国内株式市場はほぼ右肩上がりで推移しました。
一般的にアクティブファンドは指数よりも値動きが激しい、つまり市場感度βが1.0より大きいため、このような場合は指数を上回りやすいようです。
他方、5年保有で見てみると、指数に勝つことができたアクティブファンドは半数以下に留まります。
市場感度が大きいとすると、ダウントレンド時は指数よりも大きく下落する可能性が高いことが想定されます。
そのため長期間でならすと、平均への回帰により市場平均である指数と同程度のリターンに収束するハズです。
つまり、コスト考慮前の超過リターンαが限りなくゼロに近づくというコトになります。
そして、アクティブファンドは運用に際して情報収集などのコストが嵩むため、信託報酬などのコストが高い傾向にあります。
そのため、コスト考慮後の超過リターンαは、コスト分だけマイナスに転じる可能性が高いです。
アクティブファンドのうち、純資産残高が大きくて信託報酬が低いものでも1%前後。
例えば、いま人気を博しているひふみ投信の信託報酬は、0.980%(税抜)となっています。
インデックスファンドの場合、国内指数(TOPIX)連動ファンドで信託報酬0.1%~0.2%もあります。
例えば、人気シリーズのeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の信託報酬は、0.159%(税抜)です。
(2019/1/23追記)
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の信託報酬は年0.155%(税抜)となります。
(2019/5/2追記)
eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の信託報酬は年0.14%(税抜)となります。
凄腕運用者がいるアクティブファンドを選べれば問題ないですが、長期間にわたり市場平均に勝ち続けるファンドを選べないという前提に立てば、平均への回帰により市場平均に限りなく近いリターンに収束し、コスト分だけリターンが削られます。
アクティブファンドはインデックスファンドよりもコストが高いとすれば、長期投資がおススメと言われる個人投資家がどちらを選ぶべきかは明白ですよね。
どちらが王道だと考えるかは人それぞれ
今回参照した記事においても、冒頭で「インデックスを否定する必要は無い」と書いていました。
ワタシもこの意見には賛成で、「アクティブとインデックスのどちらかが不要」とは考えません。
「みんな違ってみんないい」だと思いますが、長期投資を志す個人投資家が選ぶのであれば、コストが低いことを最大の理由として、インデックスファンドを選択するのが良いと考えます。
1年前後の短期間でリターンを得たいのであれば、アクティブファンドを選択すれば市場平均を上回る可能性が残されているので、アクティブが向いていると考えます。
何が良いかは人それぞれなので、突き詰めると王道など存在しないと考えることもできます。
また、インデックス型とアクティブ型のどちらが王道であると考えるか、人によって意見が異なるでしょう。
インデックスファンドとアクティブファンドはコインの表裏のような関係という見方もあります。
どちらが良い悪いではなく、その特性を踏まえたうえで、どちらを選択すべきか自分で判断することが重要だと思います。
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