青井ノボルです。
少し前になりますが、第1期運用報告書が発表された楽天VTI。
楽天VTと同時発表で、実質コストが一時期話題となりました。
2017/9/29に設定された、楽天・全米株式インデックス・ファンド。
米国籍ETFのVTIに投資するファンドで、楽天VTIと呼ばれています。
実質コストについて、楽天投信投資顧問は追加説明資料を連発。
運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について(2018/10/5)
運用報告書「1万口当たりの費用明細」の経過について(2018/10/31)
この記事では運用報告書や追加資料、他ファンドの比較を踏まえ、楽天VTIの実質コストを考察します。
大人気の楽天VTI
楽天・全米株式インデックス・ファンドは、楽天VTIと呼ばれています。
米国籍ETFのVTIに投資するファンドオブファンズで、全米株式が対象です。
また、2018年1月からスタートしたつみたてNISAの対象ファンドでもあります。
(引用元:楽天・全米株式インデックス・ファンド|楽天投信投資顧問)
2017/9/29の設定以来、純資産総額を順調に伸ばしています。
今年中の純資産総額300億円達成も、夢ではありませんね。
ところで、当初は楽天VTの方が大きな注目を集めていました。
FOY2017で第1位に輝くなど、鮮烈なデビューを飾っています。
楽天VTIと楽天VTは、同じ時期に設定された兄弟ファンド。
ともにバンガードブランドの人気ファンドとなっています。
どちらも人気ですが、楽天VTIのほうが大きく伸びています。
当初予想を覆し、楽天VTIが人気を集めているのが実態です。
米国株投資の勢いが増しているのは、間違いなさそうです。
第1期運用報告書から試算される実質コスト
先月、楽天バンガードシリーズの第1期運用報告書が公表されました。
楽天VTIについても、初めての決算を迎えることになりました。
運用報告書には「1万口あたりの費用明細」という項目があります。
信託報酬以外にかかる運用コストが、一覧でまとまっている表です。
こちらの記載内容を確認しながら、実質コストを試算していきます。
第1期目は決算期間が変則的
第1期目における特有の問題ですが、決算期間には注意が必要です。
シリーズで決算日を合わせる関係上、設定日から1年未満で決算を締めています。
楽天VTの場合、第1期の決算期間は2017/9/29~2018/7/17です。
おおよそ10ヵ月間くらいであり、正確には292日間となります。
日数計算は、下記サイトで確認することができます。
初日を「含む」にチェックを入れるのがポイントです。

1万口当たりの費用明細を確認
楽天VTIの運用報告書から、1万口当たりの費用明細を確認します。
一覧表になっているのですが、内容は下図の通りです。
(引用元:楽天VTI第1期運用報告書|楽天投信投資顧問)
前述の通り、この費用明細は1年未満の変則決算に基づく数字です。
この数字は1年間の年率ではないことから、年換算する必要があります。
年換算することで、実質コスト(年率)の推定値が求められるのです。
実質コストの年換算方法
年換算の計算方法ですが、人によって様々な考え方があります。
ワタシの場合は、下記条件で年換算の計算を行うこととします。
- 交付目論見書の信託報酬年率をそのまま採用
- 費用明細のうち信託報酬以外の項目だけ決算期間で年換算する
→具体的には292で除算したのち365を乗算して算出する - 信託報酬年率に年換算した費用明細(信託報酬除く)年率を加算
具体的に計算します。
信託報酬は、交付目論見書から税込の数字を抜粋します。
信託報酬年率=0.1296%
費用明細のうち信託報酬以外の項目を決算期間で年換算します。
売買委託手数料年率=0.077/292×365=0.09625%
有価証券取引税年率=0.000%
その他費用年率=0.029/292×365=0.03625%
以上をまとめると、下記の通りとなります。
なお、表示は小数点第3位までとしています。
(前述の前提に基づく計算をしたうえで独自作成)
結果、信託報酬を含めた実質コストは年率0.262%と試算されました。
ただ楽天VTIはFoFなので、VTI本体の経費年率0.04%を加えます。
VTI経費率を加えた、楽天VTIの実質コストは年率0.302%と推測します。
楽天VTIの実質コストが高いか低いかを考察
楽天VTIの実質コストは、第1期運用報告書で年率0.302%と推測しました。
このコスト水準が高いのか低いのか、感じ方は人それぞれだと思います。
例えば、MSCIコクサイ(日本除く先進国株式)は約6割が米国株式です。
eMAXIS Slim 先進国株式は、実質コスト年率0.198%と推測しています。
この水準と比較してしまうと、どうしても高コストに映ります。
また、指数は違いますが米国株式を対象とするiFreeS&P500はどうでしょう。
第1期運用報告書から、実質コストを計算した結果は下記の通りです。
(楽天VTIと同様の計算をしたうえで独自作成)
第1期運用報告書の日数が373日となっている点に注意して計算します。
その結果、iFreeS&P500の実質コストは0.373%と推測されました。
少なくとも、iFreeS&P500と比べると実質コストが低いと言えそうです。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較してみる
eMAXIS Slimシリーズのなかで、高い人気を誇る米国株式(S&P500)。
先日、ついにライバルのiFree S&P500の純資産総額を超えました。
しかしながら、基準価額推移をみるとiFree S&P500とほぼ一緒に。
(公開情報より筆者が独自作成)
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)とiFree S&P500を比較した結果。
連動指数が同一であり、基準価額推移に大差は見られませんでした。
つまり、iFreeとeMAXIS Slimの実質コストはほぼ一緒の水準だと推測されます。
楽天VTIは、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)より低コストなハズです。
少なくとも、米国株式のインデックスファンドにおいて。
現時点で、楽天VTIが最も低コストと考えて良さそうです。
楽天VTI実質コストへの丁寧な説明資料
第1期運用報告書の公表以降、楽天VTの実質コストが大きな話題となりました。
こうした声を受け、楽天は補足説明資料を公表することとなりました。
さらに、FOY2018の投票期間開始直前には追加の実質コスト資料を発表。
顧客本位の現れか、FOY2018対策なのか、真偽は定かではありません。
どちらにしても、丁寧な説明がなされている点は評価すべきでしょう。
まずは、運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について。
最初に追加発表されたこちらの資料、ポイントは2つありました。
- 売買委託手数料を協会規則の簡便法で計算している
→結果的に大きな数字となった - 売買委託手数料の実額は今後も同水準程度を想定
楽天VTと楽天VTIともに、こうした影響があるとのころ。
中身については、資料中の図表がイメージしやすいです。
(引用元:運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について|楽天投信投資顧問)
協会規則の簡便法で計算すると、第1期と第2期で印象が大きく変わります。
実際にかかった費用の実額とは関係なく、分母が変わってしまうからです。
協会規則では、平均受益権口数を分母として割算する簡便法で計算します。
平均受益権口数が少ない設定当初の決算では、コスト高に映ってしまう。
実態の実質コストは、年率0.302%の推定値よりも低い可能性がある。
そのようなニュアンスを感じさせる、説明資料だったと感じています。
次に、運用報告書「1万口当たりの費用明細」の経過について。
こちらでは、第1期決算後の3ヵ月間における実質コストを発表です。
円未満が四捨五入となっているので、まさに概算値といったところ。
載っている数字を単純に4倍すれば良い、という性質ではありません。
それでも、実質コストの開示について積極的な姿勢は良いですね。
ただ、今回の発表が単なるFOY2018対策かどうかがポイントです。
第2四半期を終えたタイミングで、同様の発表がされるのかどうか。
そこまでウォッチすることで、本当の開示姿勢が判断できそうです。
楽天VTIは現時点で相対的に低コストと推測
現時点で公開されている資料およびデータから、推測できる範囲において。
楽天VTIの実質コストは、他ファンドと比べて相対的に低いと考えます。
第1期運用報告書の発表時は、「実質コスト高い」という声が多かったです。
ただライバルファンドと比較する限りにおいては、相対的に低いと言えます。
米国株式に投資をするのであれば、楽天VTIは良い選択となりそうです。
もちろん、米国籍ETFの本家VTIに投資をするという選択もあります。
しかし、つみたてNISA口座であれば本ファンドは20年間非課税です。
まだ未決算ですが、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)も気になります。
純資産総額を順調に伸ばしており、楽天VTIのライバルファンドです。
ところで、楽天VTIの実質コストが今後下がっていくと仮定して。
おそらく、0.2%台後半に落ち着くのではないかと想像しています。
先ほども触れた通り、eMAXIS Slim 先進国株式の実質コストは0.1%台。
この超低コスト水準は、やはり異次元だったのだと改めて感じるところ。
超低コストで分散投資ができる、本当に恵まれた時代ですね。
楽天VTIには、米国株投資家に愛されるファンドとして。
純資産総額を伸ばしながら、頑張って欲しいと思います。
関連記事紹介
兄弟ファンドである楽天VTの実質コストは、噂通りに高いのかどうか。
自分なりの計算方法で、実質コストを推定したうえで考えてみました。

バンガードによる4つの基本原則は、個人投資家にとって非常に参考となります。
「投資のコストは最小化する」ということも、基本原則に含まれています。

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