青井ノボルです。
少し前になりますが、第2期運用報告書が発表された楽天VTI。
楽天VTIなど楽天バンガードシリーズの実質コストが判明です。
前回の運用報告書発表では、楽天VTの実質コストが想定外の高さに。
追加リリースを出して火消しに回っていましたが、今回は特に無し。
楽天VTIは第1期運用報告書の時から、低コストといえる水準でした。
今回の運用報告書も、実質コストを真っ先に確認しましたが合格点。
おおよそ低コストといえる水準でしたが、強力なライバルも誕生へ。
コスト的な優位性は、かなり薄れてしまったと言わざるを得ません。
この記事では運用報告書の内容や他ファンドの動向を踏まえ、楽天VTIの実質コストを考察します。
第2期運用報告書から試算される実質コスト
2019/9/13、楽天バンガードシリーズの第2期運用報告書を公表。
楽天VTIについても、実質コストの最新データが更新されました。
運用報告書には「1万口あたりの費用明細」という項目があります。
信託報酬以外にかかる運用コストが、一覧でまとまっている表です。
こちらの記載内容を確認しながら、実質コストを試算していきます。
1万口当たりの費用明細を確認
楽天VTIの運用報告書から、1万口当たりの費用明細を確認します。
一覧表になっているのですが、内容は下図の通りです。
(引用元:楽天VTI第2期運用報告書|楽天投信投資顧問)
この表から、信託報酬以外のファンド運用に係るコストが分かります。
ただ、ここに記載されているコストが全てとは限らない点に注意です。
実質コストの計算
年換算の計算方法ですが、人によって様々な考え方があります。
ワタシの場合は、下記条件で年換算の計算を行うこととします。
- 交付目論見書の信託報酬年率をそのまま採用
- 費用明細のうち信託報酬以外の項目だけそのまま採用(必要に応じて日数で年換算)
- 信託報酬年率に費用明細(信託報酬除く)年率を加算
- ETFに投資をするファンドの場合、ETFの経費率を加算
具体的に計算します。
信託報酬は、交付目論見書から税込の数字を抜粋します。
信託報酬年率=0.1296%
費用明細のうち、信託報酬以外の項目は下記の通りです。
売買委託手数料年率=0.036%
有価証券取引税年率=0.000%
その他費用年率=0.027%
また、本ファンドが投資するVTIの経費率は0.03%です。
以上をまとめると、下記の通りとなります。
なお、表示は小数点第3位までとしています。
(前述の前提に基づく計算をしたうえで独自作成)
VTI経費率を加えた、楽天VTIの実質コストは年率0.223%と推測します。
1年前と比べて実質コストが低い理由
楽天VTIの実質コストですが、1年前にも第1期運用報告書から推測しています。
第1期運用報告書より、実質コストは年率0.302%であると推測していました。
第2期運用報告書を踏まえた今回が、年率0.223%なので0.08ポイント差です。
この差はどこで生まれたのか、影響が大きいのは売買委託手数料でしょう。
以前に公表された追加資料で指摘された簡便法という計算方法によるもの。
売買委託手数料の実学を平均口数で割り算をして、算出されます。
口数が同じだけ増加しても平均口数に差が出ることがあるのです。
(引用元:運用報告書「1万口当たりの費用明細」の内容について|楽天投信投資顧問)
年間で100億口増加が一緒でも、平均口数は異なってきます。
第1期目は平均50億口、第2期だと平均150憶口となるのです。
基準価額が同一だと仮定して、増加口数が一緒ならば。
売買委託手数料もほぼ一緒になるものと考えられます。
すると、分子は一緒なのに分母は大きく異なることになります。
そのため、相対的に第2期目の実質コストの数字は減ることに。
実際に負担しているコストの実額が一緒でも計算上はこうなる。
この影響だけで、約0.06ポイントの差が生じていると考えます。
強力なライバルの出現で状況一変
実質コストは参考に過ぎないとはいえ、楽天VTIは低コストでした。
事実、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と実質コストはほぼ互角。
運用報告書が判明した時点で比較すると、楽天VTIが僅かに低コスト。
どちらも低コストで優れたファンドであると結論付けたいところです。
ただ、SBI・バンガード・S&P500の新規設定が発表されて状況は一変。
信託報酬が税込みで年率0.1%未満という、超低コストで新規参入です。
バンガードの米国籍ETFであるVOOに投資をするインデックスファンド。
ファンドの構造としては、楽天VTIと思いっきり被っていると言えます。
バンガードと組んでいる点、米国株式に投資ができる点も完全に一緒。
しかも大幅に運用コストを引き下げているので、強力なライバルです。
このままでは、楽天VTIにコスト的な優位性があると言い切るのは困難。
むしろ、SBI・バンガード・S&P500のほうが運用コストは低そうです。
楽天VTIはこれまで、先行者利益で純資産総額を積み重ねてきました。
実質的な信託報酬の引き下げも、VTIの恩恵に預かったに過ぎません。
信託報酬の見直しに踏み切れるかが、運命の分かれ道かもしれません。
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