青井ノボルです。
インデックス投資家の多くは長期的な資産形成を目的としています。
いわゆる老後資金として、あるいはアーリーリタイアに向けて資産形成をする。
一般的なサラリーマンでも、時間を掛けながら資産形成を目指すことができる。
ゆっくりと資産を育てていくというイメージが強いかもしれません。
ところで、インデックス投資による資産形成の目標設定はどうすれば良いのでしょうか。
人それぞれという話ではありますが、人によっては「1億円」が目安になるようです。
ワタシの場合は、インデックス投資による資産形成に具体的な目標額は必要ないと考えます。
この記事では、このように考える理由を書いていきます。
資産形成の目標額を考えたキッカケ
先日のこと。Twitterのインデックス投資界隈で、あるブログ記事が話題になりました。
それは、ちゅり男さんのブログ「神経内科医ちゅり男のブログ」のこの記事です。
インデックス投資オンリーで金融資産1億円を達成するには、相当な金額の入金を継続し続ける必要があり、並々ならぬ決意が求められます。
インデックス投資で金融資産1億円の実現にはどの程度の本気度が必要か – 神経内科医ちゅり男のブログhttps://t.co/SPQ8jKvInh— ちゅり男 (@churio777) 2018年6月25日
ざっくり要約すると、「インデックス投資で億万長者になりたければ、実現可能性の高い計画を立てましょう」というお話。
もし目標が資産額1億円では無いとしても、数字にはシビアに向き合いましょうということです。
ちなみに、ちゅり男さんはドクターとして勤務する傍ら、ブログで毎日発信されています。
日常生活では決して交わることの無い職業の方が、投資についてどう考えているのか。
未知の世界を垣間見れるので、興味深く読ませてもらっているブログのひとつです。
さて、このブログ記事を契機として、Twitterでは様々な意見が飛び交いました。
いろんな考え方に触れることができて、個人的には結構面白かったです。
インデックス投資は期待リターンに期待しない
2018年のつみたてNISAスタートを契機として、インデックス投資が広がりを見せています。
つい先日ですが、民間企業である丸井グループが積立投資業界への参入を表明しました。
つみたてNISA適格ファンドを扱う予定であり、インデックス投資の普及にも繋がりそうです。
ところで、インデックスファンドによる長期投資は地味な存在です。
市場平均リターンを僅かに下回るリターンしか見込めません。
数年間で資産が倍々ゲームで増えて、あっという間に億り人。
残念ながら、そういった刺激的な世界ではありません。
インデックス投資の期待リターンは、全世界株式で年5%程度でしょうか。
毎月積立で複利効果が期待できるとして、資産額が元本の倍になるまで26年かかる計算です。
超長期であれば平均回帰性が期待でき、リターンは一定のレンジに収まる可能性が高いです。
ただ、投資期間が20年程度だと仮定すると、過去には一方的な相場動向もありました。
ここで、NightWalkerさんの著書「世界一ラクなお金の増やし方」から引用します。
どうなるかわからない将来のリターンを算段に入れてしまうのは、無理なところもあるのです。
(引用元:「世界一ラクなお金の増やし方 #インデックス投資はじめました」P119)
目安としての期待リターンはあっても、数字通りに資産形成できるワケではない。
それこそ、複利効果で右肩上がりになる資産形成は妄想の世界に過ぎません。
期待リターンを想定しても、その通りになる可能性は限定的と考えるのが妥当だと思います。
資産形成の前提にあるもの
資産形成の目標額について考える前に、前提条件について整理します。
人それぞれですが、ワタシは人生をエンジョイし続けたいと考えています。
資産形成でお金を増やすことは、人生の選択肢を広げるための手段です。
人生はお金が全てではありませんが、選択肢を広げるためにお金は必要です。
お金に悩む人生よりも、悩むことなく常に人生をエンジョイしたいですよね。
そう考えると、現役時代に無理のない範囲で投資して、老後の生活を豊かに過ごす。
このバランスが上手く取れると、人生をエンジョイできそうな気がしています。
絶妙なバランスを崩さないこと、これが資産形成の前提条件です。
インデックス投資の資産形成に目標額は不要
ここからが本題ですが、インデックス投資による資産形成の目標額を設定すべきか否か。
考え方は様々だと思いますが、個人的には目標額は不要であると考えます。
この考え方、実はブログを書き始めた初期の頃からあまり変わっていません。

自分で書いたブログ記事ですが、少し引用します。
資産形成の目的も目標も、全然定まっていないというのが現実。
ただ、現時点において、ワタシはこれでいいと考えています。通常、何かを成し遂げるためには明確な目標を持つことが大事だと言われています。
目標はより具体的に、できるだけ定量化すべきだというのがセオリーでしょう。ただ、何十年という長い人生が思い通りに進む可能性は低いし、今後どういう道を辿るかを明確に描くこともできません。
将来のこと、しかも老後の生活がどうなるか、どうしたいかを考えても仕方ないと思っています。これまでの人生を振り返っても、転職・結婚・住宅購入といったライフイベントなど、その時に最善と思われる選択肢を選び続けてきただけ。
事前に計画を立てて、その計画通りの人生を歩んできたワケではありません。
人生の設計図を描き、人生に必要額を算出して、具体的な目標額を設定する。
それはそれで素晴らしいことですが、ワタシは息苦しさを感じます。
雑な言い方をすれば、人生はなるようにしかならないと思っています。
お金は確かに大事ですが、所詮は人生のオマケ的な存在に過ぎません。
お金があると「人生を常にエンジョイする」ための選択肢を広げてくれます。
選択肢が増えると、人生をエンジョイできる要素が増える可能性があります。
一方で、選択肢が増えても、それが楽しさを確約してくれるワケではありません。
「絶対にプラスの効果がある」とは言い切れないということです。
「人生の目的はしあわせ持ち」という考え方
前述のブログ記事を書いた当時から変化したことと言えば、「人生の目的はしあわせ持ち」という概念を知ったこと。
つみたてNISAフェスティバル2018における岡本和久氏の講演でこの概念を知り、強く共感しました。
岡本和久氏の基調講演だけでも来た価値あった!
資産形成の目標額を決める必要はなくて、できる範囲で節約して資産形成に回す。資産活用期は手元にあるお金で幸福感を最大化すれば良い。#つみフェス2018— 青井ノボル (@sindanindex) 2018年4月21日
「資産形成期」は、できる範囲で節約に努めて投資を続けていきます。
収入から投資額をマイナスしておき、残りで生活できればベストです。
このことで、金銭的に質素な生活でも満足できる価値観を養えます。
「資産活用期」は、手元にあるお金という現実と向き合って生活します。
いまあるお金で、幸福感を最大化することにフォーカスするだけです。
この考え方は、まさに目から鱗でした。
そのほか「岡本和久のI-OWA日記」にも素晴らしい金言があったので紹介します。
「富」には内側の富と外側の富があります。
内側の富というのは、心のなかのしあわせ感、満足感です。人生はこの内側の富を最大化するためにあります。外側の富とはモノやおカネです。基本的には外側の富はほとんどおカネに換算することができます。もちろん、内側の富と外側の富はイコールではありません。
内側の富とおカネに換算した外側の富を結び付けるのが「価値観」です。言い換えると、1円がもたらす幸福感です。1円当たりの幸福感が高まるほど、外側の富が同じでも内側の富は増えていきます。逆に、いくら外側の富が増えても、1円当たりの幸福感が下がっていくと、内側の富はちっとも増えません。
(引用元:資産運用「気づきのタネ」(25)「しあわせ持ち」の方程式)
こうした考え方に立脚すると、資産形成の目標額を明確にする必然性が無くなります。
1円あたりの幸福度が下がれば、いくら資産形成しても幸せになれないからです。
資産形成も資産活用も、できることを無理のない範囲でやっていく。
そのことを意識して、シンプルに継続すれば良いのだと思います。
必要なのは目標額でなく金融リテラシーを養うこと
インデックス投資による資産形成に具体的な目標額が必要ない理由は、ここまで書いてきた通り。
リスク許容度や家計支出といった制約の中で、できる範囲で投資する。
これを実直に続けていくことこそ、大切なのだと思います。
ここでもうひとつ、重要だと感じているポイントがあります。
それは、資産形成を通じて金融リテラシーを養っておくことです。
これは、NightWalkerさんの著書「世界一ラクなお金の増やし方」に書かれていた概念です。
大事なコトが書かれているので、ちょっと引用させてください。
実体験で培われた金融リテラシーこそが、出口戦略の根幹です。つまり、そのワザを身に付けたあなた自身が出口戦略の要となるのです。
(中略)
(出口が近くなった頃には)自分の状況に応じて、どういう運用をすればいいか、自ら考えられるようになっているはずです。
(引用元:「世界一ラクなお金の増やし方 #インデックス投資はじめました」P203)
インデックス投資による長期間のバイ&ホールドを基本戦略として、資産形成をするとします。
何十年という長い投資期間には、リーマンショックのような暴落にも何度か遭うでしょう。
またライフイベントに対応するため、お金に関する選択に迫られる場面もあるでしょう。
お金に興味を持って勉強し、様々な経験を乗り越えて、金融リテラシーを養っていく。
金融リテラシーさえ身に付ければ、少なくともお金で悩むことは少なくなるでしょう。
また、目標額を設定しなくても、結果的に一定の資産額が積み上がるのではと思います。
そして、資産形成後の資産額がいくらであっても、人生をエンジョイできる気がします。
価値観は人それぞれ
長々とワタシの考え方を書いてきましたが、絶対的な正解ではありません。
また、この考え方や価値観を誰かに押し付けるつもりは毛頭ありません。
価値観は人それぞれなので、目標額を設定するほうが良い人も居ると思います。
それはそれでアリだと思います。「みんなちがってみんないい」です。
この記事を書いた最大の理由は、自分の考え方を整理すること。
その延長で、誰かの役に立つことができたら素敵なことです。
最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。
億万長者の話題があったけど、資産形成に目標額って必要ない気がするんですよね。
現役時代は適度にスリムな家計にして支出を抑え、投資や貯金で資産を形成する。
老後には、手元にあるお金の範囲で楽しく暮らす。
金融リテラシーさえ身に付けておけば、お金に悩まず楽しく生きていける気がします😇— 青井ノボル (@sindanindex) 2018年6月28日
インデックス投資による資産形成に正解は無いけど、おそらく続けることが大事。
長期投資を続けるためには、長期投資を志す個人投資家同士の繋がりを大切に。
いろいろな刺激を受けながら、金融リテラシーを養っていきたいと思います。
■関連記事紹介■
人生の目的は、お金持ちではなくしあわせ持ちになること。
岡本和久氏の講演は、目から鱗の金言ばかりで勉強になりました。

NightWalkerさんの著書は、インデックス投資について基本から学べる良書です。
投資経験者にとっても、この記事で取り上げたような金言が豊富で勉強になります。

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コメント
うちはこのように考えます。
「目標額は決めなくとも、目標は立てたほうがよい」です。
少し考えが古いかも知れませんが、PDCAサイクルって考えがあります。
P:プラン(計画)
D:ドゥ(実行)
C:チェック(評価)
A:アクション(改善)
資産運用にこれを当てはめれば・・・
P:運用方針→D:運用→C:年次評価→A:リバランス のような感じでしょうか。
個々人で考えの違いがあることを前提として
会社を例にすれば売り上げ計画を作成する際に数値目標が必要になると思います。前年比+何%とか、2030年度までに売上高3000億円目指すとか。
計画に数値が入ってないと達成感がないのではないかと思ったりします。
コメントありがとうございます。
インデックス投資の場合、PDCAを回すことはあまり意味が無い気がしています。
PDCAを回すことで、短期的な視点で投資判断してしまうリスクを感じます。
同じ金額があったとしても、価値観によって感じる幸福感が異なることを前提として。
老後になった時点で、手元にあるお金で幸せに過ごすことが大事なんだと思います。
数字とは無関係のところで、自分なりに達成感や充実感を得られればと考えます。