ニッセイ<購入・換金手数料なし>の信託報酬率引き下げ理由を探る

投資信託・ETF

青井ノボルです。

2018/6/29、ニッセイアセットマネジメントより信託報酬率引き下げのリリース発表がありました。

<購入・換金手数料なし>シリーズ6ファンドの信託報酬率引下げ(投資信託約款変更)について

リリース資料によると、計6ファンドの信託報酬を引き下げるとのこと。

信託報酬の引き下げは、前日の2018/6/28時点で日本経済新聞が報じていました。

ニッセイAM、手数料下げ インデックス投信で: 日本経済新聞
ニッセイアセットマネジメントは投資信託の運用手数料を引き下げる。日経平均株価などに連動する「インデックス型」6本を対象に、引き下げは4回目。残高が積み上がったことで効率性が上がっており、手数料を業界最低水準まで引き下げることで顧客への還元を増やす。

eMAXIS Slim シリーズが信託報酬の徹底対抗引き下げを連発するなか、追随してこなかったニッセイ。
このタイミングで、主要なファンドの信託報酬を現時点の最低コストまで引き下げてきました。

この記事では、ニッセイAMが発表した信託報酬引き下げの内容を確認するともに、その背景にある理由を探っていきます。

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ニッセイAMによる信託報酬引き下げリリースの内容

ニッセイAMの<購入・換金手数料なし>シリーズは、全部で12本あります。
今回はそのうち、6ファンドの信託報酬を引き下げると発表しました。

対象となるファンドは下記の通りです。

  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ新興国株式インデックスファンド
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(6資産均等型)
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ日経平均インデックスファンド
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
  • <購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(8資産均等型)

2018/7/13と2018/8/21の2回に分けて、信託報酬が引き下げられます。

信託報酬の引き下げ幅は限定的

今回信託報酬を引き下げる<購入・換金手数料なし>シリーズは業界最低水準のコストとなります。

確かに業界最低水準なのですが、eMAXIS Slim シリーズが追従してくるのはほぼ確実。
そのせいか、現時点の業界最低水準より少しだけ低いコストを提示するに留まっています。

日経平均・外国株式(先進国株式)・新興国株式・バランス(8資産均等型)の4本は、eMAXIS Slim シリーズとライバル関係にあるファンドです。
信託報酬年率(税抜)を表にまとめてみました。


(公開情報より独自作成)

今回の引き下げで<購入・換金手数料なし>シリーズが最低水準となりますが、eMAXIS Slim シリーズをほんの少し下回っただけ。

たしかに「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」を掲げるeMAXIS Slimが対抗してくるのは間違いありません。
とはいえ、この信託報酬引き下げではやや消極的な印象であると言わざるを得ません。

eMAXIS Slim シリーズを圧倒する信託報酬引き下げとならず、残念です。

<購入・換金手数料なし>とeMAXIS Slimの4ファンド比較

超低コストファンドを実現するためには、運用コストの削減が必要不可欠です。
運用コストを削減するための要素は、大きく分けて2つあると考えています。

  1. 販売会社の顔ぶれ
  2. マザーファンドの規模

販売会社の顔ぶれを比較

大前提として、販売会社がネット系のみだと有利とされています。
何故かと言えば、運用報告書等の資料印刷・発送が不要だからです。

eMAXIS Slim シリーズのコスト削減要因は、表向きにはコレだと言われています。
たしかに、紙代・印刷代・製本代・送料など。かなりの負担になると思います。

そのほか、販売会社数も重要な要素だと考えます。

というのも、信託報酬は委託会社と販売会社と受託会社(信託銀行)で分け合うものです。
当然ながら、全ての利害関係者と信託報酬引き下げについて合意する必要があります。

合意を取り付けるとき、販売会社の数が多ければ多いほど、交渉が困難となるのは明白です。

更に言えば、ネット系金融機関はコスト削減に耐えられる土壌があるでしょう。
一方で、実店舗を構える金融機関ではなかなか厳しい、という側面もあります。

ここで、販売会社について比較した表をご覧ください。


(公開情報より独自作成)

国内株式(日経平均)と外国株式は、<購入・換金手数料なし>シリーズが不利な状況です。
この2ファンドにて信託報酬引き下げを実現できたという事実は、称賛すべきかもしれません。

マザーファンドの規模を比較

もうひとつ、コスト削減の大きな要素と思われるのがマザーファンドの純資産総額です。

ファミリーファンド方式の場合、ベビーファンドはマザーファンドを通じて投資します。
つまり、マザーファンドの規模が大きければ大きいほど、規模のメリットを享受できます。

そんなわけで、マザーファンドの純資産総額を比較した表をご覧ください。


(公開情報より独自作成)

国内株式(日経平均)は、<購入・換金手数料なし>シリーズがやや有利でしょうか。

主戦場である外国株式(先進国株式)をみると、eMAXIS Slim シリーズの規模が圧倒的です。
3倍近い大きな差になっています。

新興国株式はデータが取れませんでしたが、おそらく大きな差は無いと思われます。

また参考までに、各ファンドの純資産総額(2018/6/28時点)の比較はこちらです。

国内株式(日経平均)と外国株式は、設定日が古い<購入・換金手数料なし>シリーズが優勢。
新興国株式とバランス(8資産均等型)は、eMAXIS Slim シリーズが圧勝です。

ただ、繰り返しますが、重要なのはあくまでマザーファンドの規模だと考えます。

ところで、純資産総額が大きくなってコスト削減できた分を投資家に還元するのは、<購入・換金手数料なし>のお家芸
今回のリリース資料でも、純資産総額増加によるコスト削減分を還元するというメッセージを示唆するグラフを掲載しています。


(引用元:<購入・換金手数料なし>シリーズ6ファンドの信託報酬率引下げ(投資信託約款変更)についてより一部抜粋)

規模が大きい方がコスト的に有利となるのは間違いなさそうです。

主戦場の外国株式(先進国株式)から探る信託報酬引き下げの理由

思わぬタイミングで発表された、<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬率引き下げ。
今後のインデックスファンド人気動向に、どのように影響するのでしょうか。

<購入・換金手数料なし>シリーズといえば、一番有名なのは外国株式だと思います。

外国株式は、「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」の上位常連ファンドです。
先進国株式に投資できる低コストインデックスファンドとして、親しまれてきました。

昔からインデックス投資を実践してきた方には、ホルダーも多いと思います。
そして、現在も当ファンドの積立を続けているという方も多いと想像します。

一方で、eMAXIS Slim 先進国株式は2018年に入ってから人気を集めているファンドです。
人気化のキッカケは、2018/1/30に信託報酬の大幅な引き下げを断行したこと。

つみたてNISAの開始時期も重なり、ここから一気に純資産総額を積み上げてきました。

2018/1/4-2018/6/28の純資産総額の増加ペースを比較します。

<購入・換金手数料なし>外国株式が、約130億円のプラス。
eMAXIS Slim 先進国株式が、約115億円のプラスです。

eMAXIS Slim 先進国株式が追い上げていますが、まだニッセイが有利な状況。
ニッセイAMとしては、この優位性を確保したかったのでしょう。

信託報酬の引き下げは、既存の積立中顧客を囲い込むのが主な目的。
そして、あわよくば新規の積立顧客を取り込んでいく、という戦略であると想像しています。

そう考えてみると、ニッセイAMの選択は意外と悪くないかもしれませんね。

信託報酬引き下げ合戦の行く末

インデックス投資家にとっては、信託報酬の引き下げは歓迎すべきこと。
超低コストで投資ができる環境は、本当にありがたいです。

さてここで、この記事でお伝えした内容をまとめます。

今後の低コスト競争はどのように展開されるのでしょうか。

<購入・換金手数料なし>シリーズとeMAXIS Slim シリーズの一騎打ちとなるのか。
それとも、他社の低コストファンドシリーズが揺さぶりを掛けてくるのか。

ワタシは今後もeMAXIS Slim シリーズの勢いが止まらないと見ていますが、実際はどうなるか分かりません。

信託報酬引き下げの攻防ですが、もう少しだけ続きそうな気もします。
コストは超重要な要素なので、今後の動きにもも注目していきます。

 

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以前、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)が信託報酬を引き下げたときに書いた記事です。
今回のニッセイAMに対抗して、eMAXIS Slim シリーズの引き下げが実施されるのか注目ですね。

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青井ノボル
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