青井ノボルです。
先日、NHKのクローズアップ現代+で金融関連の特集がありました。
「あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜」と題して。
インデックス投資界隈ではお馴染みの、山崎元さんがゲスト出演です。

分かりやすくて学びの多かった番組で、ひとつ気になるデータが。
金融行政方針に載っている投信やリスク性商品に関するデータです。
期末のプッシュ型営業や乗換取引が、繰り返されている可能性がある。
もし本当であれば、顧客本位の営業とは大きくかけ離れた酷い話です。
この記事では、投資信託の営業現場で期末の押し売りや乗換取引が横行している可能性、手数料ビジネスの行方について書いてきます。
超低金利政策の影響は大きい
金融機関はなぜ、個人向けの金融商品販売に注力するのでしょうか。
理由は、超低金利政策による法人向け融資の収益悪化です。
今の時代、低い貸出金利による過当競争が起こっています。
そこで重要な収益源となるのが、個人向けの金融商品販売です。
金融機関の信用を武器にして、手数料ビジネスを展開しています。
クロ現+のアンケート調査でも、この実態が明らかとなっています。
番組では銀行、生命保険会社、証券会社など、全国およそ170の金融機関に緊急アンケートを実施。
(中略)
例えば、日銀の低金利政策については、87.5%が「経営上、影響を受けている」と答え、その理由としては「収益の悪化」、そして「低い貸し出し金利による競争の激化」が挙げられていました。そして収益が悪化する中、87%が保険や投資信託の販売などによる手数料ビジネスを拡大している実態も明らかになりました。
(引用元:あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜|NHK)
金融機関も生き残りをかけて、手数料ビジネスに注力していきます。
手数料ビジネスの暴走
金融機関が収益確保のため、手数料ビジネスに走っているのだとか。
手数料を稼ぐためには、金融商品の販売額を上げる必要があります。
販売ノルマを設定して、ノルマ達成を現場に強いることで収益を上げる。
こうした管理が行き過ぎると、現場は手数料ありきの営業をしてしまう。
顧客の資産形成ではなく、手数料が高い商品を優先してノルマを達成。
こうした積み重ねが、徐々に金融機関の信用を損ねていくのでしょう。
クローズアップ現代+でも、現役JA職員による悲痛な声が紹介されました。
「果たしてこれがお客さんのためだったのかという契約も、多々ありました。デメリットをそんなに言わず、メリットを推していって。」
「毎年毎年のノルマがなんとかなる数字だったものが、もう今ではよっぽど頑張ってもちょっと厳しいなというのがあって。お客さんには申し訳なかった。」
(引用元:あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜|NHK)
ワタシも以前、中小企業経営者に個人ローンを押し付ける話を聞きました。

手数料ビジネスの暴走、そろそろ終焉に向かって欲しいところです。
平均保有期間と販売額月次推移の残念なデータ
クローズアップ現代+の中でも紹介されていた、金融行政方針のデータ。
平成30事務年度の金融行政方針に載っていて、とても興味深い内容です。
ひとつは、投資信託の平均保有期間に関するデータです。
(引用元:平成30事務年度金融行政方針|金融庁)
このデータは、主要行等9行、地域銀行20行、主要証券7社で集計。
平均保有期間は、どの業態でみてもおおよそ2.5年間となりました。
平均保有期間の短期化傾向が見られ、個別には大差があるようです。
また、月次のリスク性商品の販売状況を検証したデータもありました。
(引用元:平成30事務年度金融行政方針|金融庁)
四半期の締めとなる月に、販売額が分かりやすく増加しています。
おそらく、四半期ごとに課されるノルマが影響しているのでしょう。
この2つのデータに関して、金融庁は金融機関へ厳しい言葉を並べています。
月次のリスク性商品(投資信託と一時払保険)の販売状況を検証した結果、四半期末ごとに販売額が増加しており、特に、運用環境に左右されにくい一時払保険の販売において顕著な増加が見られた。投資信託の平均保有期間や保有顧客数が伸び悩んでいることも踏まえると、営業現場では、収益目標を意識して、期末に向けてプッシュ型営業により、特定の顧客に対し乗換取引を繰り返している可能性が窺われる。
(引用元:平成30事務年度金融行政方針|金融庁)
データの解釈は様々ですが、金融庁がここまで踏み込んだ指摘をするとは。
金融機関の営業に対して厳しい見方をしているのは、間違いなさそうです。
手数料の見える化と顧客本位
これからの個人向け金融ビジネスは、顧客本位が強く求められそうです。
そして顧客本位と密接に関連するのが、手数料の見える化だと考えます。
例えば、保険商品の保険料は純保険料と付加保険料に分解できます。
純保険料は、将来の保険金支払いに充てるためのお金です。
付加保険料は、保険会社の経費や販売代理店の販売手数料。
つまり、付加保険料は加入者にとっては単なる手数料です。
保険商品の場合、保険料の中身は原則としてブラックボックス。
保険料のうち、手数料部分が幾らなのか分からない仕組みです。
特に貯蓄性保険は、金融庁も「投資信託の類似商品」と言っています。
いくらお金を投入して、コストはいくらで、期待収益率はどうなのか。
他業種と異なり、金融商品であるが故にコストは超重要事項なのです。
そのため、手数料などコストの見える化が顧客本位に繋がると考えます。
金融サービスを選別する個人も、手数料に対して敏感になるべきです。
更なる低コスト化は実現するのか
クローズアップ現代+では、不正営業防止のためAI活用という話題もありました。
AI活用で不正営業防止は良いことですが、不正は金融機関の管理体制不備が要因です。
ゲストの永沢裕美子さんも、AI活用についてコメントしていました。
永沢さん:先ほど、山崎さんから高い販売手数料の話が出ましたけれども、こういったこと(不正防止に向けたAI活用)をやっているから、高い販売手数料が正当化されるというようなことは、あってほしくないなと思っております。やはりコストを下げていくという取り組みは、金融機関には常にしていただきたいと思います。
(引用元:あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜|NHK)
AIを使わざるを得ないのは、金融機関の現場で不正営業が起こるから。
不正営業防止のためのコスト、顧客が負担すべきなのでしょうか。
そもそも、発生したコストを手数料に全部付加して良いのでしょうか。
リターン増加に資するコストなら歓迎ですが、そうでは無さそうです。
ゲストの山崎元さんも、手数料についてコメントしていました。
山崎さん:やはりそもそも金融商品の手数料を下げる、あるいは一人一人の顧客からどれぐらい手数料を取っているのかということ自体を数値化して、(金融庁が)監督できるようにする。手数料はどれぐらい取っています、これはサービスに見合っているかどうかということを顧客が分かるように、例えばレポートさせるとか、そういう仕組みをきちんと作っていくことを通じて、もう少しやらないといけないと思いますね。
(引用元:あなたの資産をどう守る? 〜超低金利時代の処方箋〜|NHK)
手数料に見合うサービスかどうかの判断は、本当に重要だと思います。
そういう意味でも、個人の金融リテラシーは必須となりそうですね。
更なる低コスト化を実現するには、個人も変わらなければなりません。
金融サービスの相談は無料、という概念を捨てることも必要でしょう。
タダで儲かる話を教えてくれる、というほど世の中甘くないですよね。
金融機関に勧められるがままに金融商品を買い、後悔しないように。
あなたの大切な資産が、手数料ビジネスの餌食とならないように。
これからの時代、個人も金融リテラシーを高めておきましょう。
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普通のサラリーマンこそ、つみたてNISAが適していると考えます。
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