青井ノボルです。
個人型確定拠出年金のiDeCoでは、運用商品を選択するのが原則です。
iDeCoは掛金拠出はもちろん、運用も自分自身で行う年金となります。
2018年5月には法律が改正され、指定運用方法が規定されました。
掛金の配分設定をしなかった場合、指定運用方法が適用されます。
特定期間や猶予期間を経てからの適用とはいえ、面白い制度です。
配分設定しないと、いわゆるデフォルト商品で運用されるのです。
各運営管理機関(金融機関)は、それぞれの考え方があるようで。
指定運用方法を選定した理由は、しっかりと公開されています。
この記事では、各金融機関による指定運用方法の選定理由から「金融機関目線の年金運用にベターな運用商品の条件」を考察します。
法律で規定された指定運用方法
2018年5月に確定拠出年金法等の一部を改正する法律が施行されました。
これにより、「指定運用方法」が法律によって明確に規定されたのです。
法改正前も、初期設定の商品として元本確保型商品で運用していたようです。
これが法改正で、運用商品を指定しても運用損失の責任を負わないと明確化。
元本確保型商品から運用商品へのシフトが期待された制度であるようです。
iDeCoは自らの意志で運用を指図する制度で、指定運用方法もはじめに説明。
掛金の配分指定が無い場合は、猶予期間を経て指定運用方法が適用されます。
指定運用方法の選定理由は公表される
運営管理機関である金融機関が、指定運用方法を選定する場合。
選定理由を適切な方法で提示するものと規約に書かれています。
具体的には、個人型年金規約第90条の2第4項が根拠となります。
連合会の理事長は、運営管理機関から第90条の2第3項に規定する指定運用方法及び当該指定運用方法を選定した理由の提出を受けた場合は、ホームページに公表し、その内容を直近の策定委員会に報告しなければならない。
(引用元:個人型年金規約第90条の2第4項)
要するに「iDeCo公式サイトで公表しましょう」ということです。
直近では、平成31年3月版がホームページで公表されています。
金融機関目線による年金運用にベターな運用商品
iDeCoで指定運用方法に選定する運用商品には、選定理由があって。
金融機関として、デフォルト商品に相応しいと考えている商品です。
言い換えれば、金融機関目線で年金運用にベターな選択ということ。
厚労省や金融庁の顔色を伺いつつ、健全な選択をしているハズです。
金融機関で一般的に売られている投信は、手数料ビジネスの単なる手段に。
一方で指定運用方法は選定理由を公表するため、下手なことはできません。
指定運用方法を選定した理由の公表資料には、真っ当なことが書かれている。
顧客目線で年金運用に良いと思われる選択について、ヒントが隠されている。
こうした仮説を立てたうえで、公表資料の中身を確認してみます。
定期預金が圧倒的多数
平成31年3月版の指定運用方法の選定理由公表資料を確認します。
すると、実際は元本確保型商品である定期預金が圧倒的多数です。
「貯蓄から投資へ」といったように運用商品へのシフトは進んでいない。
個人投資家としては残念な印象を受けますが、現実は難しいようでした。
その選定理由を見てみると、運用商品に対する後ろ向きな姿勢が伺えます。
- 物価上昇によって資産価値が目減りする可能性(インフレリスク)はありますが、預金保険制度の対象であり、安全性が高い元本確保型の商品であることを重視
- 運用により見込まれる利益(リターン)、運用に係る手数料、および運用結果として拠出した掛金の合計額を上回る可能性等を総合的に考慮し、元本確保型商品で、中途解約時に中途解約利率が適用されるものの元本が確保される当該商品を指定運用方法として選定
- ろうきんは自己資本比率、不良債権比率など財務状況は健全、定期預金の運用実績も十分。預金保険の対象であり、長期に安定した運用が可能であることから選定
(引用元:指定運用方法及び当該指定運用方法を選定した理由の公表(平成31年3月版))
選定理由を見ると、とにかく安全性を重視している印象です。
入口で丁寧に説明するとはいえ、元本確保型商品でないと心配。
加入者と後でトラブルになるよりも、賢明なのかもしれません。
また、iDeCoは使い始める人の年代にバラツキもあるでしょう。
60歳直前であれば、元本確保型商品を選ぶのも良さそうです。
ターゲットイヤー型も比較的多い
元本確保型商品の次に多いのが、ターゲットイヤー型です。
目標年齢に近づくと保守的な資産配分となりリスクを低減。
年齢に合わせてリスク調整をしつつ、リターンを狙います。
その選定理由を確認すると、根底にある考えは一緒でした。
- 物価、外国為替相場、金利その他経済事情の変動に伴い、損失が発生する可能性がありますが、分散投資をおこなうことで対象年齢に応じて、基準価額の変動リスクを変更しながら、安定的な基準価額の上昇を目指しています。
- 老後の資産形成を目的とした長期運用を行うことでリスクに応じた収益が期待できることから、本プランの指定運用方法として選定いたします。
- 販売手数料や信託財産留保額がなく、信託報酬も類似商品と比較して低水準に抑えられています。
- 年齢を経るにつれ、リスク許容度が小さくなることを想定して設計されており、長期的な観点から、物価その他の経済事情の変動により生ずる損失に備え、収益の確保を図ることが可能な商品です。
(引用元:指定運用方法及び当該指定運用方法を選定した理由の公表(平成31年3月版))
年齢を重ねると、その人のリスク許容度が下がること。
また、老後の資産形成に向けた長期投資を前提として。
損失が発生する可能性はあるものの、収益確保が期待できるだろう。
そんな金融機関の考え方が、選定理由から読み取れると思います。
iDeCoによる運用だけを考慮すれば、この通りかもしれません。
長期投資の視点が重要
ターゲットイヤー型以外のファンドも、幾つか選ばれています。
バランスファンドもあれば、株式のみのアクティブファンドも。
ファンドにより書きぶりは異なりますが、共通点も多い模様。
選定理由を見てみると、キーワードは「長期」「分散」です。
- 弊社は確定拠出年金制度の長期的観点に基づき、物価その他の経済事情の変動により損失が生じる可能性も考慮し、収益の確保を図るため、国内外の株式や債券に分散投資することでリスクが分散され、資産分散・時間分散効果が得られる運用方法に該当するとの判断で選定いたしました。
- 低コストで全世界の株式と債券へ分散投資が可能、かつ年に1回、市況見通しの変化によりある程度の範囲で資産配分比率の調整をすることで、長期においても市況環境に合わせた投資で安定的なリターンの積み上げが期待できると考え、本商品を指定運用商品として選定します。
(引用元:指定運用方法及び当該指定運用方法を選定した理由の公表(平成31年3月版))
価格変動のリスクを許容できるなら、長期投資や分散投資によって。
リスクを分散しながら、安定的なリターンの積み上げが期待できる。
個人型確定拠出年金制度であるiDeCoを長期にわたり活用する前提で。
いわゆる運用商品を選んでも良いのではないか、という考え方ですね。
ターゲットイヤー型の選定理由でもあった通り、長期視点は重要です。
また、リスク許容度に合わせたリスク低減を図ることも大切な要素。
年金運用に資する運用商品には、こうした要素が求められる。
監督省庁のプレッシャーの中、金融機関が言っているのです。
もちろん、結論ありきでお行儀よく書かれた文章なのでしょう。
それでも公表資料なので、下手なことは書けないと思われます。
若者世代はもちろん、生涯投資を続けるなら年齢は関係ありません。
もし50歳代でも、iDeCoを契機に長期投資をはじめるのはアリです。
人生を通じた資産形成に資する投資とは、どういうものなのか。
こうした情報もヒントにして、考えてみると面白いと思います。
関連記事紹介
iDeCoは掛金の所得控除を受けることができ、節税効果も期待できます。
節税額を計算してみたら、意外と大きな金額だったので効果絶大です。

投資の非課税制度として活用できるiDeCoですが、あくまで年金制度の一部。
つみたてNISAと比べると使いにくい部分もあり、優先順位は考えたいです。

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