GPIFがアクティブ運用で新しい実績連動報酬を導入

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青井ノボルです。

日経ビジネス(紙媒体)を読んでいたら、面白い記事を発見しました。

「巨鯨」GPIFが促す運用改革
GPIFがアクティブ運用で導入した実績連動報酬体系が、波紋を広げている。市場平均の値動きを上回らないと報酬が大きく目減りするため、運用会社からは不評だ。だが「顧客本位の業務運営」からは理にかなった報酬体系なだけに、今後追随する動きが出る可能性も。

ざっくり言うと、GPIFがアクティブ運用において成果主義的な報酬体系を導入したという話題です。

GPIFのTwitter公式アカウントでも呟いていたらしく、すでに知っている方も多いと思います。

皆さんご存知だと思いますが、GPIFとは年金積立金管理運用独立行政法人のこと。
年金積立金の管理・運用を行い、各種年金の安定に寄与することが目的の法人です。

その収益は国庫に納付され、将来的な年金給付の財源となる。
公的な色合いが強く、世界最大級の機関投資家でもあります。

そんなGPIFが、アクティブ運用の手数料の在り方について一石を投じた。
これには、とてつもなく大きな意味があると考えます。

この記事では、GPIFがアクティブ運用で導入した実績連動報酬体系について、またその背景や運用会社の今後について考察します。

アクティブ運用委託先の運用成果が芳しくない

この話題の基となるのは、GPIFの新しい実績連動報酬という資料です。

今回の新しい報酬体系を導入するにあたり、GPIFには下記の問題意識があったとのこと。

  • GPIFでは全資産の約2割をアクティブ運用機関に委託して運用しているが、2014~2016年度の3年間で目標超過収益率を達成したファンドは少数にとどまる(図表1)。
  • この原因としては、GPIFの選定能力の問題に加え、アクティブ運用機関側には目標超過収益率の設定が適切でない可能性及びキャパシティ管理より受託残高の増大に注力している可能性が考えられる。

(引用元:GPIFの新しい実績連動報酬

3年間という時間軸で評価するのが、適正かどうかは別問題として。

アクティブ運用であっても目標超過収益率を超えるのは大変なようです。
とはいえ、約3/4がベンチマークを上回っているのは流石ですね。

GIIFが問題意識を持っているのは、目標超過収益率を達成するファンドが少ないこと。
この要因としては、現行の固定報酬(基本報酬率)の高さや報酬率上限が足枷となり、超過収益獲得に向けた努力の動機付けが働かないものと考えているようです。

冒頭に紹介した記事でも、このように触れています。

GPIF市場運用部長の陣場隆氏は「GPIFが1社当たりに委託する資金は数千億円と通常の企業年金より1ケタ多い。資産を毀損しないよう保守的な運用にとどめる会社が増えてしまったのでは」と分析する。
成績の良しあしにかかわらず一定の報酬が受け取れる固定報酬制では、運用会社はリターンを追求するより守りに入りがちだ。GPIFはこうした姿勢を変えるため、新たな報酬体系の導入に踏み切ったといえる。
(引用元:「巨鯨」GPIFが促す運用改革|日経ビジネス

こうした問題意識を背景として、新しい実績連動報酬を導入するに至ったようです。

アクティブ運用は成果主義的な報酬体系へ

GIIFは前述の問題意識を踏まえて、アクティブ運用の報酬体系を改定しました。
その内容をざっくり説明すると、下記のとおりです。

  • (従前より)報酬額は基本報酬と実績連動報酬から構成
  • 基本報酬率を機関投資家向けのパッシブ運用の料率まで引き下げ
  • 実績連動報酬は報酬率の上限を撤廃
  • 実績連動報酬額のキャリーオーバー制度導入
  • 原則として複数年契約(コミットメント)を締結

基本報酬率は、目標超過収益率が未達成でも支払われる報酬の部分。
いわば、投資成果と無関係に支払われる、最低限保証された報酬です。

今回、基本報酬を機関投資家向けパッシブ運用の料率まで引き下げます。
その代わりとして、報酬率の上限を撤廃して青天井にします。


(引用元:GPIFの新しい実績連動報酬

固定性の高かった報酬体系を、より成果主義的な報酬体系へと変革されるということです。

サラリーマンでいうと、年功序列からフルコミットメントの給与体系に変えるようなもの。
運用会社にとっては、激変と言っても過言ではないと思います。

また、年金運用は長期投資が前提であり、また投資成果の単年評価は難しいところ。
そこで、超過収益額のプラスマイナスを長期にわたって考慮できるキャリーオーバー制度を導入。
あわせて、複数年契約(コミットメント)の締結をセットにしたようです。


(引用元:GPIFの新しい実績連動報酬

45%と55%という数字の意味は分かりませんが、よく考えられた制度のようです。

GPIFによるアクティブ運用コストへの辛辣な見解

GPIFの資料には、アクティブ運用の新しい実績連動報酬を検討した経緯についても書かれています。
ここで書かれている内容が、運用会社にとっては耳の痛い話であるように感じました。

ざっくり要約します。

  • 現行の実績連動報酬は上下限の幅が狭く基本報酬率が相応水準に
    →アクティブ運用を実施する人件費等の経営コストにも配慮する形
  • GPIFは原則パッシブ運用のみで年金財政上の運用目標を達成できる
  • アクティブ運用は超過収益の確信がある場合のみ実施すればよい
  • 成果の出ないアクティブ運用に対して多額の報酬を支払うのは抵抗あり
  • 基本報酬率は運用受託機関のコスト構造とは無関係
    →GPIFにとっての代替手段であるパッシブ運用の手数料水準が適切

これは、あくまでもGPIFの事情を勘案した見解に過ぎません。
ただ、主語を個人投資家に置きかえてもほぼ一緒だと思います。

インデックス投資の期待リターンで満足している個人投資家であれば尚更です。

また、GPIFは資料のなかで更に掘り下げた内容を書いています。

一般社会においては、財やサービスの価格は、それらが有する価値をもとに需給関係によって決まるものであって、供給者のコスト構造が価格に直接反映するものは公共料金等に限定されていること、及び高報酬のファンドマネジャーやアナリストといった専門家の雇用により固定費が相応の水準になるとしても運用成果が上がらなければ顧客にとって意味がないことを踏まえれば、今回の基本報酬率の設定方法は公正な考え方ではないか。しかしながら運用業界においては、こうした考え方の変化は、経営の在り方に抜本的な見直しを要する思想的な変革と見做しうるのではないかと考える。
(引用元:GPIFの新しい実績連動報酬

正直なところ、公的な立場にも関わらず勇気を出して正論を発信したなと感じました。
特に「運用成果が上がらなければ顧客にとって意味がない」とは、よく言い切りましたね。

運用会社への外部圧力が高まっている

運用会社の立場で考えると、新しい実績連動報酬は収入が不安定化する要因となります。
また、他の機関投資家にもこの考え方が広まっていくと、更にリスクが大きくなる。

収入のリスクが大きくなったら、人件費を含めたコスト構造の見直しも不可欠でしょう。

この場合、コストの固定比率を下げて変動比率を上げ、持続的な利益計上を目指すのが定石。
継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)がある限り、利益計上は企業の生命線です。

また、金融庁からは従前より、フィデューシャリー・デューティーを強く求められています。
外部から顧客本位の業務運営を迫られるいま、運用会社の舵取りは難しそうです。

市場の効率化にはアクティブ運用が必要不可欠

インデックス投資は、効率的市場仮説が前提となっているのはご存知の通り。
市場の効率化には、アクティブ運用による売買の積み重ねが必要不可欠です。

パッシブ運用とアクティブ運用は表裏一体であるとも言えるかもしれません。

GPIFも、資料の終盤でこのように書いています。

GPIF はユニバーサルオーナーとしてパッシブ運用への依存度が高いが、パッシブ運用が成果を上げるためには、効率的な資本市場が大前提であり、市場の効率化に日々力を尽しているアクティブ運用は GPIF にとって不可欠な存在である。今回の仕組みの導入を契機として、運用業界とりわけアクティブ運用機関の一層の高度化に繋がるのであれば、GPIF 及び被保険者にとってこの上ない利益がもたらされるものと確信する。
(引用元:GPIFの新しい実績連動報酬

アクティブ運用を担う骨太な運用会社が増えることは、インデックス投資家にとっても良いこと。
GPIFによる今回の取り組みが、運用業界全体の発展に繋がることを祈るばかりです。

 

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