青井ノボルです。
返礼品が貰えるお得な節税制度として、定着しつつあるふるさと納税。
好きな自治体に寄付をすることで、税控除が受けられる制度です。
2018/7/6、総務省より「ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)」が公表されました。
このなかで、返礼品の自粛を促す総務大臣通知を無視する12自治体を名指ししています。
総務省としては、強制力こそないものの大臣通知の徹底を促したいようです。
この記事では、ふるさと納税の現状を統計データから確認するとともに、今後の返礼品動向について考察します。
ふるさと納税の返礼品競争に総務省が介入
居住する自治体ではなく、例えば故郷の自治体に税金を納めたい。
そうしたニーズを汲み取る形でスタートした、ふるさと納税制度。
いつしか返礼品競争が過熱し、総務省が大臣通知で自粛を要請する事態となりました。
2016年には、金券類や家電製品、そして返礼割合の高い返礼品の自粛を要請。
2017年にはもう一歩踏み込んで、返礼割合は3割以下とするよう求めました。
2018年には、上記に加えて返礼品を地場産品に限定するように通知しています。
段階的に、返礼品への自粛要請を強めていることが分かると思います。
こうしたなか、総務大臣通知を無視して独自路線を突き進む自治体もあります。
大臣通知はあくまで自粛要請であり、従わなくても罰則などはありません。
そして、自粛しない方が寄付金額を多く集められるという実態もあります。
ふるさと納税受入額トップ20自治体
総務省公表の資料より、ふるさと納税受入額トップ20自治体を確認します。
(引用元:ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)|総務省より一部抜粋)
これを見ると、大阪府泉佐野市が突出しているのが一目瞭然です。
泉佐野市は、ワタシも何度か寄付をしたことがあります。
たしかに「攻めているな」という印象はありました。

返礼品には地場のタオルなども含まれていますが、その種類は約1,000種類。
鹿児島県産のうなぎや長野県産の桃、格安航空会社のポイントなど、その種類は多岐にわたります。
こうした営業努力があり、100億円を超える寄付を集めました。
大臣通知を無視して「返礼品を見直す意向がない」12自治体を初公表
さきほどの泉佐野市の例では、総務大臣通知を無視した返礼品ラインナップです。
地場産品に限定されておらず、返礼割合も30%を大幅に超過しているハズです。
総務省としては、こうした自治体が1位に躍り出るのは面白くないのでしょう。
そこで、今回公表された資料の中で、下記3つの条件に当てはまる自治体名を挙げています。
- 返礼割合3割超の返礼品及び地場産品以外の返礼品をいずれも送付している
- 総務省調査に対して平成30年8月までに見直す意向がないと回答
- 平成29年度受入額が10億円以上
上記3つの条件を満たしてしまった自治体は、下記の通りです。
(引用元:ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)|総務省より一部抜粋)
さきほどの受入額トップ20にランクインしている自治体も多いですね。
自治体間の自由な競争による、ふるさと納税スキームを活用した寄付金集め。
予想外の展開だったかもしれませんが、なぜ総務省は厳しく対応するのでしょうか。
真相は分かりませんが、このように言及している記事もあります。

国が介入すべきなのか、自治体が自由に競争すべきなのか。
再度、落としどころを考えないといけないのかもしれません。
ふるさと納税は驚異的な伸び率に
ふるさと納税の平成29年度の実績は、約3,653億円、約1,730万件。
前年度と比較すると、ともに約30%の増加となりました。
(引用元:ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)|総務省より一部抜粋)
ワンストップ特例制度がはじまった平成27年度から一気に伸びています。
確定申告が不要となり、サラリーマンに広く普及したのが要因でしょう。
ふるさと納税専用サイトも乱立していて、競争が激化している面もあります。
ある意味で、局地的な官製バブルが起こっていると言えなくもありません。
個人的には「楽天市場」「さとふる」「ふるさとチョイス」を使ったことがあります。
このほかにも、中小規模のふるさと納税サイトが乱立しているようです。
ふるさと納税返礼品は今後どうなる
ふるさと納税による弊害もありますが、自治体間の競争が起きるのは良いことだと考えます。
総務大臣通知は真っ当なことを言っているように感じますが、自由な競争を阻害する面もあります。
何を選ぶかは一般市民による選択であり、その結果は自分自身で受け入れるほかありません。
自分の住んでいる自治体の税収が減ることで、道路工事や学校建設が滞るかもしれません。
一方で、自治体も安定収入であるが故に、予算主義で無駄な支出がある可能性もあります。
納税者はこれから、経済合理性を求めてより高還元な返礼品を求めるのか、社会的意義のある資金使途の自治体に寄付するのか、あるいは自分の住んでいる自治体に今まで通り納めるのか。
様々な選択肢があるからこそ人は悩むワケですが、税金を考える契機にもなる制度です。
個人的には、ふるさと納税制度がどうあるべきかの議論が深まっていない現段階では、これまで通りの返礼品ラインアップで良いのではと考えます。
総務大臣通知で留めておいて、一応通知を無視した自治体に睨みを効かせながらも、自治体は返礼品をどうするか自由に判断できる。
今のバランスが、ほどほどに緊張感もあって良いのではないでしょうか。
そのため、あと数年は返礼品もこのまま変わらずに推移するものと考えます。
より良い制度として定着するように、官民ともに改善する必要はありそうです。
ふるさと納税制度の変遷を見守りながら、今後も上手く活用したいと思います。
(2018/9/7追記)
いまだに50%還元のギフトカードが登場するなど、過熱感が収まりません。
総務省も制度見直しに向けて本腰を入れているようで、今後に注目です。

■関連記事紹介■
経済合理性を求めるのであれば、ふるさと納税制度を使わない手はありません。
ワンストップ特例制度でハードルも下がっているので、使いやすい制度です。

2017年分のふるさと納税について、住民税控除されることを確認しました。
税金についても学ぶ機会となるので、ふるさと納税はおススメです。

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コメント
ふるさと納税をする住民が多く、寄付される金額よりもさらに多くの税が流出する自治体から、フェアでないと不満が上がり、突き上げられたのが実際のところなのでは。住民サービスに影響するからね。見直しは当然でしょ。
コメントありがとうございます。
いまのふるさと納税制度が完璧とは言えませんし、このあと法規制も決まりました。
「こども宅食」で寄付金を集めた文京区、ふるさと納税で一部費用をまかない「すみだ北斎美術館」を開業させた墨田区、などなど。
都心部の自治体でも工夫次第で寄付金を集めることができる例もあるので、一定の競争環境は悪くないのではとも考えます。