青井ノボルです。
三菱UFJ国際投信は本日、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を新規設定する旨をリリースしました。
EDINETで公開されている有価証券届出書はこちらです。
三菱UFJ国際投信のプレスリリース資料はこちらです。
公開資料によると、2018/10/31に新規設定されるようです。
世界分散を好むインデックス投資家が、待ち焦がれていた全世界株式。
除く日本や3地域均等型ではなく、正真正銘のオール・カントリーです。
この記事では、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)について、ワタシなりに調べた結果をできるだけ詳しくお伝えします。
ブロガーミーティングで話題に上がっていた
eMAXIS Slim シリーズのファンド新規設定は、2018/7/3の米国株式(S&P500)以来。
久し振りにビッグニュースが舞い込んできたことを、素直に嬉しく感じています。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、待ちに待ったファンドです。
先日開催された三菱UFJ国際投信の第2回ブロガーミーティングでも話題になりました。
ブロガーミーティングのなかで、代田常務は全世界株式(3地域均等型)の苦戦を認めていました。
また、全世界株式ファンドの「ど真ん中のところで勝負しなければいけない」とも発言しました。
期待が高まるなかで、遂に発表された全世界株式(オール・カントリー)の新規設定。
2017/9/29に設定された楽天VTに対して、ガチンコ勝負を挑むファンドが登場です。
インデックス投資には様々な考え方があり、そのひとつが時価総額比率の全世界株式。
ワタシは時価総額比率の全世界株式に投資をしたいので、嬉しいニュースです。

世界分散投資の王道中の王道とも言えるファンドが、eMAXIS Slim シリーズで登場。
ノーロードインデックスファンド業界のトップを走る三菱UFJ国際投信が遂に動いた。
本ファンドが登場する意味は、非常に大きいのではと感じています。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の概要
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の基本情報を整理します。
概要は、三菱UFJ国際投信のプレスリリース資料を見れば、一通り分かります。
ベンチマーク
MSCI ACWI(配当込み、円換算ベース)をベンチマークとして、値動きに連動した投資成果を目指します。
ACWIはオール・カントリー・ワールド・インデックスの略称で、先進国と新興国を合わせた株価指数となっています。
具体的には、MSCIワールド・インデックス(先進国23ヵ国)とMSCIエマージング・マーケット・インデックス(新興国24ヵ国)を1つにまとめた指数です。
MSCI指数ハンドブック(2018年5月)によると、銘柄数は2,493。
先進国・新興国の大型株・中型株で構成される時価総額比率の指数です。
ちなみに日本国内だと、MSCIワールドから日本を除いたMSCIコクサイが有名ですね。
MSCI ACWIの地域別構成比率は、全世界株式インデックス・ファンドの月報を参照するのが簡単な方法です。
(引用元:全世界株式インデックス・ファンド2018年8月月報|ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ)
地域別構成比を見ると、国内:先進国:新興国が7.4:81.6:11.1となっています。
なお、構成比はその時点における時価総額比率によって微妙に変化します。
ここでのポイントは、ベンチマークの指数が配当込みとなっている点です。
これまでのeMAXIS Slim シリーズは、ベンチマークが配当無しの指数でした。
実際は配当込みの指数に連動して運用しているのにも関わらず、そうでした。
この点は第1回ブロガーミーティングで言及があり、個人的には納得しました。
オフレコ話なので詳細は書けませんが、仕方が無いと諦めていたところです。
配当込みのベンチーマークであれば、指数との連動性が分かりやすくなります。
また、運用コスト等によるベンチマークとの乖離率が数字で明確に分かります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が、なぜ配当込みにできたのか。
真相は闇の中ですが、個人投資家にとっては歓迎すべき変更点だと考えています。
為替ヘッジ
原則として為替ヘッジは行いません。
為替相場変動の影響を受けます。
ファンドの仕組み
ファミリーファンド方式となります。
具体的には、下図の通りです。
(引用元:三菱UFJ国際投信のプレスリリース資料)
3本のマザーファンドを通じて、MSCI ACWIに採用される株式等に投資をします。
対象インデックスとの連動を維持するため、先物取引等を利用する場合もあります。
MSCIコクサイ(日本除く先進国株式)に連動する、外国株式インデックスマザーファンド。
MSCIエマージング(新興国株式)に連動する、新興国株式インデックスマザーファンド。
MSCIジャパン(日本国内株式)に連動する、日本株式インデックスマザーファンド。
当ファンドは、3本のマザーファンドに時価総額比率で投資をします。
ここでのポイントは、日本株式インデックスマザーファンドが新設されることです。
EDINETの添付資料にある信託約款を確認してみます。
こちらのP46より、日本株式インデックスマザーファンドの約款です。
P58に「信託契約締結日 平成30年10月31日」と記載されています。
つまり、本ファンドと一緒に新規設定されるということです。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を実現する上で障害だったたこと。
三菱UFJ国際投信には、MSCIジャパンに連動するマザーファンドがありませんでした。
国内株式クラスは、TOPIXや日経225に連動するファンドしか設定が無い。
故に、これまでMSCI ACWIと連動するファンドを設定できなかったのです。
eMAXIS Slim シリーズ、従前は既存のマザーファンドを活用する方針でした。
マザーファンドの新規設定は初の試みであり、思い切った決断だなと感じます。
ファンドの費用(コスト)
気になるコストですが、eMAXIS Slim シリーズらしく低水準に抑えています。
購入時手数料は無し(ノーロード)、信託財産留保額も無しです。
肝心の信託報酬ですが、年率0.142%(税抜)となっています。
(引用元:三菱UFJ国際投信のプレスリリース資料)
純資産総額が増えると信託報酬が下がる仕組み、eMAXIS Slim シリーズではお馴染みですね。
ちなみに、eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)・先進国株式・新興国株式の既存ファンド。
信託報酬をMSCI ACWIの地域別構成比(国内:先進国:新興国=7.4:81.6:11.1)で按分してみます。
(公開データを基に筆者が独自作成)
按分した信託報酬を3つ足し合わせると、0.122%(税抜)です。
国内株式の指数が異なっているとはいえ、自作版全世界株式よりは割高となります。
時価総額比率の全世界株式に1本で投資できるメリットを、0.02ポイント差に感じるかどうか。
ワタシの私見ですが、利便性を考慮すれば検討に値する超低コストファンドだと思います。
設定日
2018/10/31に新規設定されます。
この設定日には、実は大きな意味があります。
投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018をご存知でしょうか。
FOY2018は、投信ブロガーによる投票で投資信託を選ぶ恒例行事です。
対象は、2018年10月31日までに設定された投資信託(ETF含む)です。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)もギリギリ間に合いました。
三菱UFJ国際投信は、過去のFOYで第1位を獲得したことがありません。
偶然かもしれませんが、FOY2018にどんな影響があるのか注目ですね。
全世界株式のライバルファンドと比較
日本を含む全世界株式のライバルを確認してみます。
楽天VT
全世界株式と言えば、真っ先に思い出されるのが楽天VTです。

楽天VTの正式名称は、楽天・全世界株式インデックス・ファンド。
米国籍ETFのVTに投資するファンドオブファンズで、全世界株式が対象。
ベンチマークの指数は、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスです。
信託報酬は0.12%(税抜)ですが、VTの経費率0.1%を加算しします。
そのため、実質的な信託報酬は約0.22%(税抜)となります。
設定日は約1年前の2017/9/29、純資産総額は2018/10/14時点で131.89億円です。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の最強ライバルが楽天VT。
とはいえ、信託報酬を比較してみると楽天VTの割高感が目立っています。
一方で、楽天VTはバンガードブランドを使えるのが最大の強み。
両ファンドのライバル関係がどうなっていくのか、注目です。
雪だるま全世界株式
全世界株式といえば、このファンドも忘れてはいけません。
SBI・全世界株式インデックス・ファンド、愛称は雪だるま全世界株式。
ちょっと変わった愛称ですが、本当に「雪だるま」なのです。
ベンチマークの指数は、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス。
米国籍のETF3本に投資するファンドオブファンズで、少し変わっています。
(引用元:SBI・全世界株式インデックス・ファンド交付目論見書)
米国株式・先進国株式(除く米国)・新興国株式の指数連動ETFの3本に投資します。
基本投資割合が決まっていて、米国:先進国(除く米国):新興国=50:40:10です。
全世界株式の株価指数に連動することを謳いながら、基本投資割合が微妙に違う。
自動的にリバランスしてくれる機能を求める場合、相性が悪いファンドですね。
信託報酬は0.1%(税抜)ですが、投資するETFの実質信託報酬0.042%程度を加算。
そのため、実質的な信託報酬は約0.142%(税抜)となります。
設定日は約1年前の2017/12/8、純資産総額は2018/10/15時点で12.77億円です。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は、年率0.142%(税抜)です。
最低運用コストの雪だるま全世界株式を意識して設定した信託報酬と言えるでしょう。
全世界株式インデックス・ファンド
ステート・ストリートの全世界株式インデックス・ファンドもあります。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)と同じく、MSCI ACWIがベンチマーク。
指数が一緒という意味では、このファンドが真のライバルかもしれません。
信託報酬は0.48%(税抜)と、やや割高となっています。
購入時手数料が2.0%(税抜)、信託財産留保額が0.3%です。
設定日は約1年前の2017/9/8、純資産総額は2018/10/12時点で6.99億円です。
純資産総額の大きさが強みですが、コストはかなり割高となっています。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はネット販路限定です。
コスト重視の個人投資家が多いため、直接的には競合しない気がします。
気になる実質コストを予想
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、コスト面で競争力を有しています。
ただ運用コストで大事なのは、信託報酬ではなくその他コストも含めた実質コスト。
運用報告書が出るまでは、実質コストを推測することすらできません。
ただし、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)はマザーファンドを共有しています。
MSCIジャパンのマザーファンドは新規設定ですが、その他は既存ファンドがあります。
そこで、eMAXIS Slim 先進国株式と新興国株式の実質コストから推測します。
過去に当ブログで試算した実質コストをまとめると、こうなります。
(公開データより試算して筆者が独自作成)
国内株式は、参考としてeMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)の推測値を入れています。
信託報酬とその他コストを合算すると、実質コストとなります。
そこで、その他コストをMSCI ACWIの地域別構成比で按分します。
(公開データより試算して筆者が独自作成)
按分したその他コストを合計すると、年率0.085%となります。
年率0.142%(税抜)の信託報酬は、税込みで年率0.153%です。
そのため実質コストは、0.153+0.085=年率0.238%と推定されます。
当然、新規設定されたMACIジャパンのマザーファンドのコストは未知数です。
ただし、MSCI指数ハンドブック(2018年5月)によると構成銘柄は321銘柄。
銘柄数が2,107(2018/9/28時点)であるTOPIXよりも、大幅に少ない数です。
少ない銘柄数であれば、ファンド規模が小さくても乖離は限定的と予想します。
運用コストはどうなるのか見当も付きませんが、全体に占める割合は7.4%です。
カストディフィーなどもかかりませんし、コストへの影響も限定的と考えます。
全世界株式インデックスファンドの大本命
三菱UFJ国際投信が満を持して発表した、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)。
全世界株式に1本で投資ができてしまうメリットのほか、コスト面でも期待できそうです。
eMAXIS Slim のキャッチコピーは業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける。
信託報酬の水準については、もう少しだけ頑張ってくれたらライバルを圧倒できた気もします。
それでも超低コストであることは間違いないですし、期待できそうなファンドです。
楽天VTと並び、全世界株式インデックスファンドの大本命なのではと感じています。
個人投資家にとって、超低コストな全世界株式インデックスファンドの充実は良いこと。
楽天VTや雪だるま全世界株式とともに、インデックスファンド業界を牽引する存在となるか。
純資産総額の推移や実質コストの推定など、今後も本ファンドに注目していきたいと思います。
(2018/10/31追記)
2018/10/31付で、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が設定されました。
同日付でつみたてNISA対象商品にも指定されてた当ファンド、今後の展開が楽しみです。

(2018/11/2追記)
マザーファンドの構成について、異例とも言える情報提供資料が公表されました。
先進国・新興国株式部分はもちろん、MSCIジャパンのマザーも大丈夫そうです。

関連記事紹介
超低コストなインデックスファンドの双璧をなす、ニッセイとeMAXIS Slim。
どちらも素晴らしいのですが、ワタシはeMAXIS Slimが有利であると見ています。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の新規設定ニュースを受けて書いた記事です。
楽天VTIとライバルですが、まさか楽天VTに対抗するファンドも設定されるとは。
この時は想像もしていませんでした。

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コメント
うちは以前にも書きましたが日本株個別の保有割合が高いのでSlim全世界型(日本除く)を積立継続します。純資産の伸びが鈍化するようでしたら、Slim全世界型に乗り換えか、先進国+新興国で積立するか決めなきゃいけませんね。
コメントありがとうございます。
国内個別株やってた人は多いと思うので、除く日本がそこそこ人気なのも頷けます。
ワタシは時価総額比率こそが良いと思っているので、今回の設定は朗報でした。
子供のジュニアNISAでも検討したいと思います!