青井ノボルです。
つみたてNISAのスタートを契機に、インデックス型投資信託の低コスト競争が激しさを増しています。
個人投資家の立場からすると、唯一コントロールできるコストが低減されるのは喜ばしこと。
健全な競争を前提として、信託報酬が引き下げられることを期待する人は多いと思います。
こうしたなか、ネット上で気になるニュースが目に留まりました。
インデックスファンドは指数に連動した運用を目指すので、指数の利用は必要不可欠です。
その指数の利用料が高いとなると、低コスト化の妨げとなってしまう可能性も考えられます。
今回はダイヤモンドの記事内容を紹介しながら、指数の利用料について考えてみます。
指数の利用料が高過ぎる
さきほどのダイヤモンドの記事ですが、強烈な一言からスタートします。
「コストが高過ぎる。パッシブ運用の『インデックスベンチマーク』の見直しを検討すべきかもしれない」。ある大手運用会社の幹部は憤る。
(引用元:ダイヤモンド TOPIXや日経平均の「利用料」が高い!運用会社の不満)
ベンチマークとするインデックス(指数)によって、指数の提供会社は異なっています。
たとえば、国内株式の日経平均株価指数であれば、日本経済新聞社が指数の提供会社です。
運用会社は、日経平均インデックスファンドの純資産残高に応じて、提供会社に利用料を支払います。
つまり、指数提供会社に対して支払っている利用料が高過ぎる、という話のようです。
指数提供会社が儲かる仕組み
インデックスファンドは、ここ数年で熾烈なコスト競争が繰り広げられています。
これは、2018年1月にスタートしたつみたてNISAにおける主導権争いに他なりません。
顧客ニーズに合わせて信託報酬を下げ続けた結果、残ったコストはごく僅かのはずです。
その中でも運用会社の自助努力では削れないコストが、指数の利用料というワケです。
運用会社と販売会社の関係でいうと、信託報酬をほぼ折半する形となることから、
信託報酬を引き下げるときは、痛みを分かち合いながら実施するイメージになります。
一方で、指数の提供会社は純資産残高に連動した利用料を徴取しているようで、もし信託報酬が下がっても利用料は変わりません。
むしろ、低コスト化で人気が出たら純資産残高が増えるので、より大きな利用料を得ることができます。
インデックスファンドが低コスト化で人気になればなるほど、指数の提供会社は自然に儲けが増えて、もはや笑いが止まらないという構図です。
そう考えると、指数の利用料が信託報酬引き下げの妨げとなっている可能性が高そうです。
指数の利用料は2種類
指数の利用料には、大きく分けて2種類あるようです。
とりわけ運用会社をいら立たせるのが、利用料の中身。利用料は、指数の詳細な情報を得る際の「データ利用料」と、主に投信の名称に指数名を用いる際の「商標利用料」の二つに大別される。業界関係者によれば、特に負担が重いのが、後者の商標利用料だという。
つまり、ブランド料が高いというわけで、ある運用会社の例では、資産残高の0.01~0.03%にもなり、収入の2割弱を占める投信もある。
(引用元:ダイヤモンド TOPIXや日経平均の「利用料」が高い!運用会社の不満)
「商標利用料」が発生するのは、恐らく下記のようなファンドだと推測されます。
- たわらノーロード TOPIX
- eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)
- iFree S&P500
たしかに、ファンド名に指数名称が入っていないと、どんなファンドか分からないですよね。
各指数のブランド力を借りている、だから商標利用料が必要、というロジックは理解できます。
指数の提供会社が長年コストを掛けて築いたブランドでもあるので、タダ乗りは絶対ダメです。
ただ、国としてもつみたてNISAなどをつくり、国民の安定的な資産形成を促しています。
その中心的役割を担うインデックスファンドにおいて、切っても切り離せないのが指数です。
指数にかかる利用料が適正水準なのかどうかは、議論の余地がありそうです。
バンガード社を目指すには
記事の終盤に、非常に気になる表現がありました。
一方、外国株のパッシブ運用指標として圧倒的なシェアを誇るのが、世界大手の指数提供会社であるMSCIの株価指数だ。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の外国株のパッシブ運用もMSCI指数が指標とされており、その運用額は実に30兆円規模に上る。単純計算で数十億円が利用料と推定される。
かつて米国の大手運用会社バンガードがMSCIのコスト高を嫌い、他社に乗り換えたことが話題となったが、日本の場合はどうか。
(引用元:ダイヤモンド TOPIXや日経平均の「利用料」が高い!運用会社の不満)
たしかに、日本でも外国株の指数としてMSCIが多用されている印象があります。
業界トップシェアを誇るMSCIですから、強気のコスト設定にしている可能性は高そうです。
また、バンガード社が過去にMSCIから他社(FTSE)に指数を乗り換えて話題になったというハナシ。
「日本の場合はどうか」と書いてあると、三菱UFJ国際投信のブロガーミーティングを思い出さずにはいられません。
それは、代田取締役の「日本のバンガード社を目指す!」という発言です。
三菱UFJ国際投信が展開するeMAXIS Slim シリーズは、「業界最低水準の運用コストを将来にわたって目指し続ける」がコンセプト。
このコンセプトを本気で追い求めるのであれば、指数の変更も選択肢のひとつかもしれませんね。
指数乗り換えの嵐はやってくるのか
個人投資家の立場からすると、インデックス型投資信託の更なる低コスト化は大歓迎です。
連動する指数も、時価総額比で広く分散されている指数であれば、特に拘りはありません。
指数を乗り換えることで利用料が低減され、その分低コスト化に繋がるなら、それはアリです。
TOPIXやMSCIで横並びのインデックスファンド業界に、指数乗り換えの嵐はやってくるのか。
将来のことはわかりませんが、今後の動向に注目していきたいと思います。
■関連記事紹介■
日本のバンガード社を目指す発言のあったブロガーミーティングに、先日参加しました。
<関連記事:オフレコ話満載の三菱UFJ国際投信ブロガーミーティングに参加>
最近のインデックスファンド界隈では、eMAXIS Slim シリーズに注目が集まっています。
<関連記事:eMAXIS Slim シリーズで業界トップを独走できるのか>
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