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青井ノボルです。

先進国株式のインデックス型投資信託で、信託報酬が最低クラスのeMAXIS Slim 先進国株式。

信託報酬が低いということは、インデックス投資家にとっては喜ばしい限りですが、
委託会社の三菱UFJ国際投信や販売会社のネット証券は収益率が低下してしまうハズです。

今回は、eMAXIS Slim 先進国株式が持続可能な投資商品なのか、コスト面から考えてみます。


信託報酬の熾烈なコスト競争

eMAXIS Slim 先進国株式インデックスは、MSCIコクサイインデックスをベンチマークとするインデックス型の投資信託です。
日本を除く先進国の株式で構成され、その半分以上が米国株式となっています。為替ヘッジは無しです。

ここまではライバルの先進国株式インデックス投資信託と特段変わりないのですが、
eMAXIS Slim 先進国株式の凄さは、他の追随を許さない信託報酬の低さにあります。

2018年1月30日時点で、信託報酬は0.11826%(税抜0.1095%)となっています。

各社が激しいコスト競争を繰り広げているなか、三菱UFJ国際投信のeMAXIS Slimシリーズは「業界最低限の運用コストを将来にわたって目指し続ける」と高らかに宣言。
他社の動向にあわせて信託報酬の引き下げていく戦略を取ったのです。

先進国株式クラスをみると、2017年までは信託報酬2%周辺でのせめぎ合いが続いていました。

こうしたなか、2017年の年末に信託報酬が年0.1155%という驚異的な低さの「EXE-i つみたて先進国株式ファンド」が発表されます。
こちらはFTSEディベロップド・オールキャップ・インデックスをベンチマークとしていて、日本および韓国も含めた先進国株式が対象

ベンチマークが異なるものの、ライバル投資信託の出現に対抗する形で、eMAXIS Slim 先進国株式の信託報酬は0.189%⇒0.1095%(税抜)まで一気に下げてきます。

結果、MSCIコクサイインデックスをベンチマークとする投資信託の中では、圧倒的な信託報酬の低さとなっています。


信託報酬の中身

ここで、信託報酬の中身をみていきます。
eMAXIS1
(引用元:eMAXIS Slim 先進国株式インデックス 交付目論見書)

純資産総額に応じて信託報酬が下がるのですが、現時点の純資産総額は約60億円。
500億円以上はまだまだ先のハナシです。

信託報酬は、委託会社(運用会社)・販売会社・受託会社(信託銀行)で分け合います。
eMAXIS Slimはネット証券でしか扱っていないので、販売会社はネット証券となります。

委託会社である三菱UFJ国際投信の取り分は、わずか0.04475%(税抜)です。

2018年1月時点で純資産総額は30億円、その後月15億円ペースで増えていっています。
この増加ペースが継続すると仮定すると、2018年の純資産総額(年平均)は120億円となるハズで、
委託会社の取り分は537万円。これが1年間の売上です。

社会保険料などを加味すると、年収480万円の人材を1人雇えるかどうかの金額。
人件費以外にもコストはかかります。

少なくとも現時点では、eMAXIS Slim 先進国株式の単体では利益が出ないものと推測されます。


販売会社は大丈夫なのか

先ほどの表にもある通り、ネット証券の取り分は、わずか0.04475%(税抜)です。
純資産総額を10億円として計算すると447,500円。これが年間売上です。

ネット証券としては、利益率が極端に低い投資商品であることは明らか。
薄利多売とでも言うべきか、一定程度のボリュームがないと厳しいですね。

ネット証券は販管費を削減することで廉価販売でも持続可能なビジネスモデルとしているはずなので、
eMAXIS Slim 先進国株式のような投資商品を扱っても問題無いと思われます

ところで、SBI証券と楽天証券では、このファンドでも保有残高に応じてポイントが付きます。
ただでさえ利益率が低いのに、投資家にポイントで還元してくれるのです。

SBI証券は、残高に対して年率0.03%のポイント。
楽天証券は、残高に対して最大月0.004%。年換算すると、最大年率0.048%のポイント
楽天ポイントは10万円毎に4ポイントのため、残高少額だと実質付与率は少し下がります。

ポイントの付与は、ネット証券にとっては利益圧迫の要因になります。
楽天証券に至っては、信託報酬の取り分よりもポイント付与率の方が上回っているんです!!

赤字覚悟の大サービスで、純資産総額が増えれば増えるほど赤字が膨らみます。
身を削って頑張ってくれているワケです。これは応援したくなりますね。


委託会社も大丈夫なのか

委託会社である三菱UFJ国際投信にとって、持続可能なコストなのか考えていきます。

まず、インデックスファンドなのでアクティブファンドと比べると運用コストは低いはずです。
というのも、ベンチマークとする指標に合わせて、ほぼ自動的に銘柄を選ぶからです。
市場調査などに費やすコストがかからない分、トータルの運用コストも下がります。

とはいえ、同じインデックスファンドの中でもここまで信託報酬を下げているワケです。
他のインデックスファンドとの違い、何かあるのでしょうか。

eMAXIS Slim 先進国株式はファミリーファンド形式となっています。
マザーファンドに複数のベビーファンドがぶら下がることで、効率的に低コストで運用ができると言われています。

eMAXIS Slim 先進国株式(ベビーファンド)の場合は、外国株式インデックスマザーファンドがマザーファンド。
で、このマザーファンドにぶら下がっている兄弟ファンドがあります。eMAXIS先進国株式インデックスです。

こちらが元祖で、Slimシリーズは同内容でコスト削減バージョン、となっています。

eMAXIS先進国株式インデックスの信託報酬は下記の通りです。
emaxis2
(引用元:eMAXIS先進国株式インデックス 交付目論見書)

Slimシリーズの信託報酬とは全然違いますね。
委託会社の取り分で見ると、eMAXIS Slim 先進国株式の約6倍です。

持続可能性を考えたとき、eMAXIS先進国株式とeMAXIS Slim 先進国株式、信託報酬の違う2種類あるという点が肝ではないかと、ワタシは想像しています。


戦略を想像してみる

ここで、委託会社である三菱UFJ国際投信の戦略を想像してみます。

eMAXIS先進国株式の販売会社は、ネット証券以外にも銀行や大手証券会社があります。
信託報酬を下げるとしても、ネット証券以外の販売会社は付いてこれなくなるでしょうから、
こちらの信託報酬を据え置いて、販売会社の利益を守りつつ、委託会社の利益も確保しておく。

そのうえで、ネット証券専用にSlimを投入し、業界最低コストを貫くことで、コストに敏感な層を確実に獲得していきます。
最初はコスト的に厳しいものの、当面はeMAXIS先進国株式の信託報酬で食いつなぎつつ、Slimの純資産総額が積み上がるのを待ちます。
Slimの純資産総額が増えてくれば、利益率が低くてもスケールメリットで何とかなるでしょう。

また、この間にコストに敏感な層がeMAXIS先進国株式から離れたとしても、おそらくネット証券での販売分が離れるだけで、他の金融機関販売分の維持拡大は期待できるハズです。
なぜなら、他の金融機関でeMAXIS先進国株式を購入している層は、金融機関のアドバイスに従っているケースが多いと予測されるため、激しいコスト競争など知る由もないからです。

金融機関の営業マンは、ネット証券でしか扱っていないSlimシリーズの存在を顧客に伝えるはずがありませんよね。基本的には自社の利益が最優先です。
また金融機関のアドバイスに従っている顧客も、自分で投資商品のことを調べようとしない人が多いのが実態ではないでしょうか。

以上が、ワタシの想像した戦略です。

ここで、想像をもとにeMAXIS Slim 先進国株式が持続可能な理由をまとめてみます。

①eMAXIS先進国株式を残したまま、新たにSlimシリーズを投入した。
②eMAXIS Slim 先進国株式で徹底的にコスト競争を仕掛け、他の追随を許さないことでコスト重視層へのPR効果が生まれた。
③コスト重視層が他社商品ではなくSlim先進国株式を選択する可能性高まるため、純資産総額が増えていく。
④純資産総額を積み上げていく過程では、eMAXIS先進国株式に収益を上げてもらい、収益を確保する。
⑤純資産総額が大きくなれば、Slim単体でもスケールメリットで収益を確保できるようになる。
⑥規模拡大によりコスト削減余地が出てくるため、業界最低コストの維持が可能。
⑦業界最低コストが維持できれば、PR効果が維持でき、純資産総額の積み上げに繋がる。以下、⑥に戻って繰り返す。

あくまで想像の域を出ませんが、勝手に想像してみました。

三菱UFJ国際投信に頑張ってねとエールを送りつつ、ワタシは全世界株式ポートフォリオの中核として、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスを淡々と積み立てていこうと思います。


■参考記事紹介■
当ファンドを中核とした全世界株式のポートフォリオを考えたときの記事です。
<参考記事:全世界株式に投資するポートフォリオを考える

全世界株式の比率は時価総額比かGDP比か、改めて考えてみました。
<参考記事:全世界株式の比率はGDPか時価総額か



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